牙龍−元姫−
里桜はショートケーキで争う2人を気にも止めずチーズケーキを食べながら呟く。
「…ひさびさに響子が入れた紅茶が飲みたいわー。このチーズケーキに絶対合う」
「淹れて来ようか?」
「え、いいの?」
「ふふ。うん」
ほんわかと会話する私たちを羨ましげに眺めながら緑川君は涙目で言う。
「…あーあ。なんて和やかなんだろ。これから輝の世話を俺様が引き受けるのか。里桜っぺに上げるよ。いまなら送料無料だよ?」
「要らない。なんで私が輝の世話をしなきゃいけないのよ。せいぜい頑張りなさい。輝なんてチョコレート渡せば大人しくなるわ」
「俺様は響子ちゃんが欲しいの!」
西に来て!とまたも同じ事を嘆く。
「私が西街に行ったら里桜に迷惑掛けるんじゃないかな…?」
「え、なんで?」
「だって違う区域だし…」
「それを言うなら私なんて南に家があるのに、今更でしょ」