牙龍−元姫−





「でも、」と続けて言うと、この前の事を思い出す。





「この前輝君が俺たちと一緒に居ると裏切ってる、って」





――‥言われた。でもそのときは戸惑ったけど上手く誤魔化された。


里桜はキョトンとすると目をつり上げた。





「あんたそんなこと言ったの!?」




どこからともなくロープを取りだして輝君を縛る。





「いぎゃあああ!」

「響子の意思を無視しないでよ!西と東の抗争に巻き込むな!それも裏切り者呼ばわり!?」

「じッ、実際そうだろうが!」

「ワケわからない事をほざくな!――――いや、確かにそうかもしれないけど!」

「別にもう野々宮は牙龍と無関係なんだから良いだろ!?ただの戯言だよ!寧ろ南に住んでるテメーが裏切り者だろうが!分かったなら離せ!」

「〜〜ッ!ムカつく!」

「ぎゃあ!図星だからってキレんな!」





縛り上げられていく輝君とSッ気のある里桜。この光景を見てあることを思い出す。





「え、えすえむプレイ…」

「どこでそんな言葉覚えたの!?」

「緑川君が、」

「ちょっと響子ちゃーん!?」

「ぬぁぁぐぁぁるぇぇい!」





目を剥いて巻き舌で叫ぶ里桜。



ドタドタと騒がしくなる部屋。



里桜愛読のギャル系雑誌が棚からドサドサ落ちる。



お茶を入れて上げようと言う名目で私はこの部屋から避難するために1階に降りた――――…。
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