牙龍−元姫−
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「響子ちゃん」
「あ、緑川君。大丈夫だった?」
「あはー。里桜ちゃん力強すぎー。型付いちゃったよ」
紐の痕が付いた腕をぷらぷらさせる。本気で絞めた里桜に苦笑してしまう。
「響子ちゃんは里桜ちゃんの家によく来るの?」
「うん。これが里桜のコップで、これが私のコップなの」
お揃いのマグカップ。薄桃色が私で黄色が里桜。マグカップには手書き風の顔の絵が書かれている。
手馴れた感じで用意している私に緑川君が聞いてくる。中学のときは週末お泊まり会をよく開いていた。
「女の子同士って華やかでいいねー。俺様の周りってむさ苦しい男ばっかだから嫌になるよー」
「ふふ。緑川君はいい保護者的な役割になってそう」
「保護者かー…でも一理あるね。面倒なガキばっかりだからさー。響子ちゃんが西街に来たら花やかになるのにー」
笑いながら言う緑川君は「西って言うよりも、」と続けた。
「俺のところにおいでよ」
スッと腰に手が回る。
いきなり触れた手に驚きびくつく。
紅茶を淹れてる途中だったのでガシャンとコップが音をたてた。