牙龍−元姫−
嘆きが聞こえる部屋を後にし、階段を下りた。
玄関につくとお気に入りのパンプスを履く。
このパンプスはいまの格好にすごくマッチしている。
アンティーク調のふんわりとしたシフォンの花柄ワンピース。七分袖で落ち着いたシックなカラー。ウエストにリボンがついていて可愛い。
「いきなり何なんだろう…?」
朝方千秋からメールが送られてきた。短文時間と場所を指定されたメール。
所謂待ち合わせ。
なにか話でもあるのかな?
と頭を捻るけどいつも普段は迎えに来てくれるのに可笑しいと思った。
別に迎えに来てくれないのが不満な訳ではない。ただ珍しいだけ。
千秋の家に居るのに千秋に逢いに行くって変な感じ。
そう思考を巡らせながら私は外へと足を踏み出す。
久しぶりの店に胸を高鳴らし弾ませながら歩き始めた。
【Noel】へと向かうために――――――‥