牙龍−元姫−
お爺さんがカウンターで苦笑いしているのを響子は見た。
そして、つられるように響子も苦笑いを浮かべる。
「カン太は千秋の事が好きなんだね」
「はいっす!滅茶苦茶カッコいいっす!千秋君はオイラの自慢のお友達っす!」
「…?」
このとき。
ふと響子は頭にハテナを浮かべた。
「(…あれ?“お友達”?千秋とカン太が?)」
千秋が“お友達”を作るなんて天変地異の前触れか。大袈裟ながらも響子はそう思わざるを得なかった。
「友達なの?」
「はいっす!千秋君がお友達になってくれたでヤンス!」
「…許可したの?千秋が?」
「そうっす!」
嬉しげに返事をするカン太。
しかし響子は複雑だった。本格的に悩み始める。許可?千秋が?―――‥有り得ないでしょ。
そう思考を巡らせる。
嬉しそうにカップケーキを食べるカン太を尻目に千秋に近づく響子。
その時2人が密かに交わした会話をカン太は知らない。
(なに企んでるの?)
(ただの純粋なお友達ですよ。)
(…ウソつき。)
(俺は元々、嘘の塊ですから。)