牙龍−元姫−
千秋は他人事のようにアッサリ告げる。
一方響子は何が何だかサッパリ分からなかった。
私に会いたい人がいる?誰?
カン太に頼んで、カン太は千秋に頼んだ。
私に会いたい人達って―――――――――‥
あれ?ちょっと待って。
“達”?複数居るの?
悩む響子の前だと言うことを忘れカン太は慌てながら千秋に言う。
口にはカップケーキのカスが沢山ついてて真剣な表情されても笑えるだけだ。
「ちょッ、千秋君!まだ言っちゃったら駄目っす!」
「なんで?」
「な、なんでって……きょん姉さんが帰ったら困るからっす!」
「俺はただ会う時間を作る役割だけだし」
「そ、そうっすけど…。確かに千秋君はきょん姉さんを呼び出すだけっす!でも皆さんが来て始めて任務達成でヤンス!」
「そんなの知らない」
「ち、千秋く〜ん…!」
飄々と自分は関係ない発言をする千秋。一体この男はどちら側なのか不確かだ。自分に冷たい千秋に涙声ですがり付くカン太。
尚、響子の目の前で繰り広げられる光景をジッと見ていた。彼女はカン太の言葉を聞き逃さなかった。
“皆さん"と言った事を―――…。
どうして、
気がつかなかったんだろう。
カン太が居る時点で不自然だったのに。千秋が居るから何も疑問に思わなかった……。
千秋が"あっち"に加担するなんて想定外だった。
そんなの、
有り得ないと思っていた。
だけど忘れちゃダメだった。
千秋は気まぐれな黒猫な事を。
「(待って。ちょっと待ってよ。私に会いたい"人達"って、まさか――――‥)」