牙龍−元姫−















今日は千秋に此所(Noel)を貸し切りにしてほしいと言われたんじゃ。まぁ理由は深く尋ねんかったが2つ返事でおぅけぃしたわい。



そしたら何じゃ?



千秋が“お友達”らしいニット帽の子を連れて来おった。



コヤツがお友達じゃと?あり得ん。あり得んぞ。何を企んどるんじゃ。



それも同い年らしい男の子。つい最近まで中学生だったあどけなさがある。本当に何処にでもいそうな子じゃった。



そうじゃ!これが高校一年生と言うもんじゃよ!年相応な雰囲気に態度!まさしく高校一年生!ただコヤツが変なだけじゃ!何じゃその澄ました顔は!



ワシの高校一年生の頃は青春じゃったよ。わはは!ありとあらゆる女子(おなご)にモテモテでのお?わはははは!――――ゴホンっ!ゴホンっ!



ワ、ワシのことはどうだっていいんじゃ!それよりも千秋じゃ千秋。


訝しげに見るワシをスルーして千秋はニット帽の子を奥の席に連れていった。



奥?珍しいのお…。



てっきりカウンターに座るかと思ったんじゃが。



そんな聞かれたくない話をするんかのう?



そしてアッサリと溢れる好奇心に負けた。探りを入れるため、会話を盗み聞きしとったら不可解な事が耳に入った。





『き、きょん姉さんは来るでヤンスか?』

『響子先輩なら来るよ。だから此所にした』

『そ、そうっすか。確か、千秋君このお店なら絶対怪しまないって言ってたっす』

『うん』

『ああ!も、もし総長達来る前に帰るって言ったらどうするっすか!?』

『知らない』

『え、ええ!?』

『俺は此所まで。後はそっちの問題』

『そ、そうでヤンスけど〜…』






きょん姉さん?


響子先輩?


…もしや響子ちゃんの事かのう?



ふむ。今の情報化社会。××生まれのワシはいんふぉめーしょん?とやらには、ちと弱い。



それでも響子ちゃんの噂は多少は知っとる。若いのが話とったわ。東に住んどる若いもんの間では、あの噂で持ちきりじゃ。なにも東だけとは限らんがのう。
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