牙龍−元姫−
「(――‥成る程のぅ。)」
ほう。それでは総長と呼ぶ、そのニット帽の子は牙龍の一員と言うことかい?
なら千秋が言っとった“後に来る5人”は最早牙龍の幹部となるんかのう?
――――聞き耳をたててゴシゴシと磨いていたコップを思わず滑り落としそうになってしまった。
ちょ、ちょい待たんか。
なんじゃこの拭えぬ違和感は…!
待て待て待たんか…!落ち着け落ち着くんじゃ!!たわけ!伊達にワシとて幼き頃戦争時代を生き抜いたわけではないわっ!!
い、いまの千秋等の話からして呼び出したのは響子ちゃんで間違いないはずじゃ…!
それに千秋の言っとった5人は牙龍の小わっぱども…!
………ハハ。ハハハ…
さ、最悪じゃ
乾いた笑いしか出てこんわ…!
なななな、なんでワシは貸し切る事を許可したんじゃあああ…っ!
もしや修羅場になってしまうじゃないんかのう……?
――――嫌な光景を思い浮かべ何十年ぶりかの涙が出そうになった。そして年金を叩いて建てたこの【Noel】が妙に恋しくなった。
「(さ、最悪じゃ。た、頼むから店だけは潰さんといておくれ)」
そう思わざるを得なかった。急に【Noel】がやけに愛おしく想え、全員が無事に帰った暁には【Noel】の大掃除をしようと思った。
そんときワシは生きとるかの…?ハァ…年寄りは労るものじゃと習わんかったんかバカ千秋め。