牙龍−元姫−
ワシが紙に夢中になっていると、向こうから話し声が聞こえてきた。
「響子」
無造作な漆黒の髪をした奴が声をかける。
こりゃ、たまげた。
随分と綺麗な男じゃな…。
黒髪の奴は一人掛けの椅子に座っとる。
三人掛けのソファーには左端からガラの悪い金髪。淡い桃色の髪をした女顔。滞りなく綺麗な青藍色の髪をした色男。
もう1つの一人掛けの椅子には物腰が柔らかいプラチナアッシュの王子様。
これが牙龍……纏っとるオーラが半端ないのう。キラキラしすぎて目が痛いわ。
あどけないニット帽の子が居たら縮こまっとるぞ。
先程ニット帽の子は千秋を追っかけて出て行った。
あの子はカウンターの前を通るときにワシに頭を下げよった。今時珍しく礼儀正しい若者じゃったのう。少しホッコリしたわい。
「……」
声は掛けたのは言いが話し出さない黒髪。
そのため再び沈黙が訪れた。