牙龍−元姫−



様々な目に捕らえられている少女の震えは治まり、目に見えるのは明らかな動揺。



誰を見るわけでもなく、目がまごついている。



それに微かに笑ったのは黒色だった。



なぜ、そんなにも優しい顔をするのか。そんな表情を向けられるのはきっと栗色の女の子だけ。





「俺は―――俺達はお前が居ねえと無理みたいだ」





和らいでいた瞳に真剣さが帯びる。





「響子、もう一度だけチャンスをくれねえか?」





少女の瞳が揺れ動く。
ぐらぐら。ぐらぐら。



頭までショートしそうなほど真剣な目。考えれば考えるほどにぐらぐらと頭を掻き回される。





「次は恐がらせたりしないって誓う。泣かせもしない。辛い想いもさせねえ」

「……っ」

「死んでも守る」





逸らせない。逸らすことが出来ないその瞳に息を呑む。



あまりにも強い想いに圧倒的されてしまう。
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