牙龍−元姫−
きっと黒が悩んでいた事も、そう思っていることも知らなかったんじゃろう。
微かに目を見張っている―――――――響子ちゃんと彼ら。
2人が屋上で接触したことは反応を見る限りは知っていたはず。
じゃがその内容は知らない。だからこそ驚いている。
――気まずさが残る空間に終止符を打ったのは白金だった。
「そんなこと言ったんだ戒吏」
「…ああ」
白金色の髪をした優美な男。微かながらにドコか棘がある言い種。
言い終えた黒に響子ちゃんは遅い反応ながらもしっかりと黒の瞳を見る。
伝う涙はもう見えない。しかし、涙の跡が痛々しい。
「…私が嫌いだから、とかじゃないの?」
「違う」
きっと“関係ない”そう屋上で言われた響子ちゃんは傷ついたのやもしれん。
自分が嫌いだから言われてしまった、と。
そんな響子ちゃんの考えを黒は、瞬時にバッサリと切り裂く。
響子ちゃんに“嫌いだから”と言われたとき微かに表情を歪めた。
“そんな筈あるわけない”と表情が物語っていた。
「言っただろ。関わらないでほしかっただけだ」
「…?」
不思議そうに首を傾げる響子ちゃん。
「俺はただ響子に………牙龍には関わらないでほしかっただけだ」
その言葉に目を細め、皮肉を込めた厭な笑みを藍色は浮かべた。
「随分と意味深な言葉じゃねえの。詳しく聞かせてくんね〜?」
――――それはワシも気になった。
藍色の言葉に内心賛同する。