牙龍−元姫−



どういう意味じゃ?



“牙龍には”関わらないでほしいとは。



意味深な言葉に首を傾げる。



カウンターの内側でその疑問を盗み聞きする。



手に持つコップは最早そっちのけ。





「俺にはよ〜?響子が牙龍と手を切ったとしても、自分だけは響子と繋がってるって聞こえるぜ?」





飴を舐め、棒を弄りながら皮肉な言葉を浴びせる。



藍色の言葉は曖昧な推測は“多分”ではなく、確実に近い推測だった。





「そうだ」

「…え?」





おろおろしながら見ていた響子ちゃんが肯定した黒に対して驚きの声を零す。



そんな響子ちゃんを見て黒は藍色から視線を外す。





「あの屋上で会ったときお前とは関わりをキッパリ断ち切ろうとは思てなかった」

「…で、でも関係ないって」

「言っただろ。“牙龍には”って。何も俺自信――――寿戒吏は関わらないとは言ってない」





…何と言う屁理屈。



驚き通り越して呆れじゃ。





「何を勘違いしたのか、結局お前は遠ざかって無意味だったけどな」





やれやれと黒はため息をつく。



何じゃそれ。たわけが。ため息つきたいのは此方じゃよ。



遠回しすぎて響子ちゃんじゃなくとも分からんわ。





「ちょっと待ってくれない?なら始めから戒吏は自分だけ響子と関わりを保とうとしてたの?」





笑顔が怖い白金。



“響子が倉庫を去ったときから、そんな下らない考えしてたのかよ”


そう含みが聞こえてきた。



…こういう場合は口を挟まんのが一番じゃ。



だからなのか喧しい桃色も大人しい。まず白金と目を合わそうとしない。恐怖からか顔が青白い。





「――…別にそういう訳じゃねえよ」





若干ながら黒も顔を青ざめながら言う。



ここで肯定してたらどうなってたんかのう。怖すぎて想像できんわ…。
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