牙龍−元姫−

ほろ苦い甘さ










***



突如現れた奇抜な小娘。



目が合うと丁寧に挨拶をしてくれた。意外に礼儀正しい。



しかしワシは目を見開き躊躇いがちに頷くだけ。



あまりの"姿"に手に持つコップが



(ゴトッ、)


滑り落ちた。



コップはそのままゴロゴロと音を鳴らし机を移動する。



コップなんかより小娘に釘付けじゃった。



現れた小娘に彼らはまだ、気づかない。





「(気づけ!はよう気づけ…!)」




奥の席でしんみりと話す彼らに向かって念じる。



しんみりとした空気を知ってか知らずか小娘は陽気に割って入った。




「やっほー!寿々ちゃん来ちゃったー!やーやー、元気かい諸君!」





誰じゃこの小娘は…!



明るい声で小娘に気づいた彼ら。



無邪気な小娘はと木で造られた床をギシギシと鳴らしながら、片手を上げて歩く。



知り合いらしい桃色が、いち早く振り向くと声を掛ける。





「遅い―――――げっ!?」





ゆっくり桃色が"姿"を捕らえると顔を瞬時に歪めた。





「いやー。参った参った!意外に長引いちゃってさー!」





長い髪を2つに結い、前髪はちょんまげ。極めつけは上下濃緑のスウェット。そしてデカいリュックサック。



まるで田舎から上京してたての、都会に染まらない田舎少女。
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