牙龍−元姫−





「…だ、だせえよ…」





無意識にポツリと呟いた桃色。



その言葉に頷いた数人。



ワシも頷いてしまった。いやはや不可抗力じゃ。いま時こんな小娘見たことないわ。とりあえず野暮ったい。



おなごってもんは簪も髪に挿して着物を優雅に身に纏うのが本物の大和撫子じゃよ。





「な、何だとォ!?必死に睡魔の魔神と格闘してきた戦士に向かってなんだ貴様!この大量の荷物を運ぶのがどんだけ辛いか…!」





大和撫子の優しさ、美しさの欠片も見えん小娘。





「編集長がなかなか帰してくれなくて………はっええええ!?」





編集者?と首を傾げるも叫び声に疑問は消え失せた。



たわけ!いちいち声がデカいわ!ワシの心臓が急停止するじゃろうが!心配停止で花畑が見えるわ!



小娘はぷるぷる震えると眼鏡越しの瞳をカッと見開いた。





「な、なんで響子ちゃん泣いてんの!涙出てる!いやはや可愛いけど!――――お前らなに泣かしてんだああああああ!!!」

「ぐッ…!何しやがるこの猿女!退け!さっさと退きやがれ!重いんだよデブ!」

「うるせえやい!絶対響子ちゃん泣かしたの遼ちんだろ!横暴なのはお前しか居ない!髪引っこ抜いてやる!禿げろ!ツルピカになってしまえ!女の涙は高いんだよ!」

「テメーにその女心っつーもんが分かるたぁ、驚きだぜ!」

「ぐぬぬぬぬ!悪!態!撲!殺!めええええつ(滅)!必殺★目潰しィィィ!」(凄まじい早さで2本の指が目を襲う。)

「ッうお!テメー…っ!目潰しとか卑怯だろ!」

「避けるな!男なら立ち向かえ!」

「何だその正論…!ムカつくけど格好いいじゃねえかチクショー!」





いやはやクオリティーの高い喧嘩じゃのう…。



こりゃあ格闘家も吃驚じゃわい。
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