牙龍−元姫−



予想通りと云わんばかりに疲れた表情をする白鷺先生。肩に入れていた力は抜け落ちている。



そして桃色によって凍った空気は割れる。一番始めに我に返ったのは桃色だった。





「はあ!?いつからお前姫になったんだよ!…え。まさか俺が知らないだけ?」

「ちがーう!だからいま姫じゃないって言ったよ!聞けよ人の話!…って帰ってこい空たん!」




自分だけが知らない事実?と衝撃を受けて口から魂を出して惚ける。


そんな桃色を否定しているが、聞こえちゃいない。



意識が飛んでいる桃色の肩を大きく揺らして呼び掛けている。





「ギャハハハハ!テメーが姫ェ!?あり得ねえだろ!傑作だな!妄想も大概にしろよ!こちとら有り難迷惑だぜ!」

「人の話を聞けえええ!」

「こんな暴れ馬な姫、俺は嫌じゃね〜の。先ずは頭を病院行って診て貰えって。な?優良病院紹介してやるから」

「『な?』じゃねえよ!つか聞けよ!アンタらの姫なんて此方から願い下げじゃボケ!だいたいアンタらの下に付くなんて真っ平御免だ!」





金色には笑われ馬鹿にされて藍色には可哀想な目で心配される。



それにマジ切れの白鷺先生。わからなくもないがな。



しかし白鷺先生は以外とじゃじゃ馬でパワフルな女性じゃのう?



ワシの清楚で可憐で白いワンピースを身に纏い野原をゆっくり駆け回る白鷺先生像がガラガラ崩れ落ちた。





「寿々ちゃん姫じゃなかったんだ…」





響子ちゃんはポツリと呟いた。



どこか納得のいかないような顔で。





「そうだって!皆なんで勘違いしてたの!?……え。なに?アタシ姫?いつからかオヒメサマになってたの?ねえ戒くん!アタシはヒラヒラなスカート履いたお姫様なの!?」

「違う」





即座に否定した黒。



白鷺先生も桃色と同様。知らぬ間にお姫様になってたと推測。しかしバッサリと黒に断ち切られた。



…どんだけ嫌なんじゃ。



白鷺先生のオヒメサマを想像したのか顔を嫌そうに歪ます黒。



藍色と金色はいまだに嫌な笑みをニヤニヤと浮かべている。



思考を飛ばす桃色に呼び掛ける白金。



まだ納得いかない様子の響子ちゃん。



自分はもしかしたらオヒメサマだったのかもしれない…!と妄想を膨らます白鷺先生。



―――――まさにカオスな状況。
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