牙龍−元姫−
桃色と金色のやり取りを横目に、此方も困ったように柔らかな笑みを浮かべる貴公子。
いくら断られたからと言って彼らがあっさり引き下がるわけない。
「響子、理由聞いてもいい?」
それに少し悩んだ表情をする。
「―――里桜は私が姫に戻ることを望んでないから」
そう言い肩を竦めた。綺麗な栗色が肩に掛かる。先ほどとは違い、どこか朗らかな表情になった。
彼女にとって“里桜”は絶対的な存在なのだろう。
「―――風見か」
「ほんと風見ちゃんは何処にいてもとことん邪魔するじゃね〜の」
「初め姫になるときもそうだったからね。響子の中心は風見さんだから仕方ないよ」
彼らは思い思い“里桜”を語る、微かな皮肉と共に。
響子ちゃんと“里桜”の仲を知っているから――――――まるで、そう返ってくるこが分かっていたかのよう。
自分達を拒むのは“里桜”が居るから。きっと彼らは予想していたのだろう。
…しんみりした空気。
なんじゃこの冷たさは。そして重い。彼らの“里桜”に対する不満さが空気に滲み出とる。