牙龍−元姫−



そんな桃色に呆れるかと思いきや、響子ちゃんは困り果てた表情を浮かべていた。





「(や、優しすぎるじゃろ)」





子供が大泣きし手に終えなくなってしまった保母さんのような目。





「…空、」

「これから絶対に響子から離れねえし!」

「“これから”?」





流石の響子ちゃんも顔を歪めた。



いきなり“これから”宣言をされたのだ。



自分は今日が最後のつもり。



なのに桃色は“これから”だと言った。口元を歪ませて響子ちゃんらしからぬ表情。





「何を勘違いしてんだか知れねえがお前の気持ちなんざ結局は関係ねえんだよ」





刺のある言葉。響子ちゃんは頭を捻る。金色の言葉の意味を考えているのだろう。



そんな響子に金色はスゥと瞳を細めた。





「別にお前が姫に戻ろうが戻ってこまいがどうだっていいんだよ」





細めた瞳に決意、覚悟、僅かな優しさが籠る。





「―――言ってんだろうが。離れねえって」





ぶっきらぼうな言葉。しかしどこか声色は甘く、切なかった。
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