牙龍−元姫−
(ワシのせいで)話は逸れたが藍色の言葉で話は路線へ戻る。
ワシは大人しくコップを磨くことにした。
次はコップを落として睨まれたら洒落にならんから、しっかりと握る。
「遼の言う通りじゃね〜の。結局は俺達の意見が変わるわけじゃね〜よ」
キャンディを舌で転がしながら言う。
僅かに見える赤い舌。何気なく舐めているであろう普通の飴。藍色が舐めると厭らしい。
しかし卑猥さはなく、ただ艶っぽさを引き立たせる。一般女子が見たら鼻血が出るくらい。
女子と言ってもココには白鷺先生と響子ちゃんだけ。鼻血を出すはずもない2人だけだから安心じゃ。
「僕達はしつこいよ?響子が僕達から二度と離れないって宣言するまで着いて回るかもね」
「かも」なんて言っとるわりに顔は本気の白金。
笑いながら冗談じみた言い方。しかし目は本気だった。これっぽっちも目が笑っていない。
―――響子ちゃん呆然と呆気にとられている。
無理もないじゃろうに。
自分は関わらないと言ったのに、いつの間にか変な方向に話が纏まっとるんじゃからのう。
眼をぱちくりと瞬きする響子ちゃんに、黒は口端を上げる。
無表情の顔が少しだけ和らいだ。芸術品のように完成された美形な顔が緩む。
漆黒の髪から覗く瞳が響子ちゃんを貫いた。
―――“そう言うことだ”
全員の意見を一纏め。
耳元で囁かれればゾクリと震え、腰が砕けそうな低く掠れた声で言う。
「覚悟しとけ」
不敵な笑みを浮かべた。
未だ戸惑う響子ちゃんにこれからは今以上に戸惑う事になるだろう―――――――そう思わざるを得なかった。