牙龍−元姫−










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誰もいなくなった【Noel】に元の静けさが戻る。



最後の最後まで騒がしい奴らじゃったのう。



響子ちゃんが最後彼らに投げ掛けた一言は彼らを固まらせるには充分じゃった。





「……ほほほっ」





ワシは思わず響子ちゃんが彼らに言った言葉を思い出して笑ってしまった。



あれぐらい構わんじゃろう。お前さんらがしたことに比べれば蚊に射されたようなもんじゃろ?可愛い罰とでも思えばいい。



悪気の欠片もない響子ちゃんが言うから、きっと彼らも何も言えなかったのだろう。








――‥カサッ。



指先がカウンターに置かれた紙切れに触れる。



横には家宝並のサインが。



黒のボールペンで書かれたひとつの文。果たして其が何を意味するのは何なのか…



Fortes fortuna juvat.



「運命は強い者を助ける、か」





宿命として逃れられないのが運命なんか?――――――ワシはそんな生き様真っ平御免じゃ。



たかだか“運命”に人生を謀られなんてな。



そんな宿命はぶち壊せばいいんじゃ。どんな手立てでも術策でも護りたいものがあれば、卑怯な手を使っても構わん。



お前さん等が“本当の裏切り者”をそうしたようにな。



運命は常に、お前さんらを味方しとるのかのう?



そんなもんワシには分からん。神でも仏なんぞでもないわ。



ただの“サンタ”じゃからのう?



悩みがあったらまた、【Noel】に来ればよい。



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