牙龍−元姫−
微かに笑った程度なのに、横目で千秋に睨まれてしまった。
私は慌てて千秋から視線を反らして、お爺さんに目線を直す。
「お爺さんは‘サンタ’さんですか?」
「ワシの呼び名はサンタじゃよ」
‘呼び名は’って。
よく分からず、隣に座る千秋を見てみる。当の千秋は出されたコーヒーを飲んでいた。ティーカップから口を離し一息付くと、教えてくれた。
「俺も本名は知らないです」
「‘サンタ’じゃないの?」
「‘サンタ’はただの愛称みたいですし」
愛称で呼び名。それは分かったけど、私はいまいち腑に落ちない。なんでサンタなの?
それを言うと‘サンタ’さんは笑いながらある事を教えてくれた。
「この店の名は【Noel】なんじゃよ、響子ちゃん」