牙龍−元姫−
事の成り行きを見守っていたけど、いきなり風見さんに名前を出され狼狽える野々宮さん。
――――そんな姿でさえ様になる。
野々宮さんをみていると学生時代の自分がつくづく惨めに思えてくる。女子高のせいか女子力は低下気味。化粧もせず寝癖のまま登校。彼氏なんて出来る筈もなく出逢いすらなかった。
対して野々宮さんと私の差は歴然。
スラッとしているキレイな足は、惜しげもなく晒されている。
手入れされてるであろうもちもちの頬っぺたに円らな瞳。潤う唇には自然と目がいってしまう。
ミディアムヘアーは内側にカール。ハニーブラウンの髪が綺麗にキまっていた。
そんじょそこらの顔だけのアイドルなんて眼じゃない。自然と放つオーラが違うのだから。
……私の学生時代とは天地の差。比べる方が可笑しいだろうけど。
私がこんな子だったらきっと毎日ウハウハの逆ハーレム状態で学園生活をエンジョイしていたに違いないわ。
――――――そんな絶対に叶うことのない切なる願いを考える私に教室の後ろの方から聞こえる会話が耳に届く。
どうやら七瀬君と藍原君が野々宮さんに絡んでいるみたいだ。
「迷惑してるの、響子?」
「え?」
突然話を振られて困る野々宮さん。
「してね〜よなぁ?」
「…えと、」
「してね〜よなぁ?な?」
「…う、ん?」
藍原君が2回繰り返す。
しかし最後はどこか無理矢理感が拭えない。
「誘導尋問みたいなことしないでよ!」
やはりここで反論するのは風見さん。
ゴールドベージュの巻き髪を揺らしながら、やや濃いメイクが施された目をつり上げる。バサバサのつけ睫毛が迫力を増す。