牙龍−元姫−
風見さんは目をつり上げながら―――――――爆弾を投下した。
「響子を裏切ったアンタ逹が今更響子に関わること自体が甚だしいのよ!」
空気が、凍った。
やけに冷たい教室。
ブリザードが吹き荒れる。
―――そんな空気を諸ともせずに嘲笑する風見さん。その浮かべる笑みはかなり満足気。
しかしそんな風見さんとは裏腹に機嫌急降下な彼ら。
凍りつく他の生徒。
ああ、もう。泣きたい…。
「あ〜ら?何も言えないのかしら?そうよね、図星ですものね〜!」
重たく冷たい空気を気にも止めずに更に嫌な笑みを深くする風見さんに、私の願いは決して届くことはない。
「(おっ、お願いだから煽らないで風見さん…!)」
空気は徐々に悪化。
教卓の1番近くにいる生徒が私に懇願の眼差しを向けてくる。
わ、私にどうしろって言うの…!
先生だからってあのブリザードが吹き荒れる4人の空間に入って凍死しろと…!?
そんなの理不尽よーっ!
しかし嫌味ったらしい笑みを浮かべて弄ってくる風見さんに、
七瀬君は見向きもせず、野々宮さんを構い始めた。
「響子、お菓子食べる?」
「無視してんじゃないわよ!」
当たり前のように怒った態度をみせる風見さん。だいたい予想はしていたことだ。
「わあ。期間限定のポッキー?有り難う」
「響子っ!?なに貰ってんの!?餌付けされてんじゃないわよ!そんなのコンビニ行けばあるから!」
あっ…
取り上げられた野々宮さんは悲しそうな瞳をする。
そのチワワのようにくりくりした円らな瞳に胸を打たれた人は数知れず。(先生も撃たれました。)
風見さんに奪われた期間限定のポッキーを寂しく見つめた。