牙龍−元姫−
その内容を思い出して微かに笑みを零す私とは裏腹、七瀬君を睨む風見さん。
「言いかけて止めてんじゃないわよ」
「ごめんね風見さん?総長が言ったらダメだって言うからさ」
確信半だろうか。
風見さんへの些細な仕返し。笑みが悪戯っぽい。
「チッ。百歩譲って響子に話しかけるとしても、」
再度逸れていた話は戻される。
やはり少々は気持ちを理解出来るのか彼らの気持ちを汲む。
嫌々ながら折れた様子。
―――‥しかし。
「ッなんでアンタ逹が此処の席に居んのよ!」
「譲って貰ったんだよ」
バンッと机を叩きながら立ち上がった。
青筋を立てる風見さんに七瀬君は何の悪びれもなくサラッと言う。
窓際から寿君。
その隣に野々宮さん。
そのまた隣に藍原君。
寿君の前に七瀬君。
七瀬君の隣、そして野々宮さんの前に風見さん。
もともと野々宮さんと風見さんは前後のままその席だった。
しかし今朝に教室に来ると寿君・七瀬君・藍原君の席が移動していた。
風見さんには「どうにかしてよ!」と言われたけど彼らが教室に来ること自体喜ばしい事だったから、すんなり流してしまった。
「脅したんでしょ!?」
「侵害だよ、風見さん…」
やはり確信半なのか悲しそうな瞳をする七瀬君。
それを見てピキピキと青筋をたてはじめる。
そんなやり取りを尻目にほわほわと華を振り巻くのは野々宮さん。
そこだけ明らかに空間が違った。
「一緒のクラスなんだね?」
「ああ。知らなかったのか?」
「うん…今日知ったの」
寿君とほんわか会話する野々宮さん。華が可憐すぎる。
どちらかと言うと野々宮さんに合わせて柔らかく会話する寿君。
珍しく瞳が和らいでいる寿君に少し驚いた。
でもふわふわの野々宮さんには相変わらず和むな、と頷く。