牙龍−元姫−
微かに反応した彼らを見逃さなかった彼女。
目を光らせ、紅いルージュは口角を歪ませる。
「ほんと残念ね〜。響子ったら素直な子なのよ。ごめんなさいね?」
おほほほほ。とお上品に笑う風見さん。派手なネイルが施された手を口元に宛がう。
それに対し、機嫌が急降下する不機嫌な彼等。
低い声で寿君は彼女を威嚇した。
「…うっせえよ山姥」
「誰が山姥よ!アンタ私にそんなこと言って良いと思ってんの?響子に嫌われるわよ?」
「……」
その言葉に口を噤ぐ。
手応えがあったのか風見さんは勝ち誇ったような笑顔を見せる。
その表情に寿君の機嫌は更に急降下。
それはもう、がくーんと。
「響子に嫌われるのは避けたいものね?だってアンタたち言われたんだから、」
一拍置き、愉快そうに口を三日月型に歪ませる。
「『私、みんなより里桜の方が好きなんだ』って」
――――彼らの機嫌はもはやブリザード並みに吹き荒れている。
自分で言った言葉なのに耐えきれなくなったのか、風見さんは声を出して高らかに笑った。
「おーっほっほっほ!ざまあ見なさい!所詮アンタ達ごときがこの私を越えるなんて無理な話なのよ!あはははは!愉快愉快!」
それが気が食わなかったのか、穏和な七瀬君が毒を撒き散らす。
「ちょっと黙ってくれない?ブスが更にブスになってるよ?」
「ッ何ですって!?この私をブス呼ばわり!?ふざけんじゃないわよこの似非貴公子が!」
「僕の優しさは響子限定だよ」
「風見ちゃんは論外みてえじゃね〜の」
「うるさい!うるさい!アンタ達の優しさなんて要らないわよ!生ゴミと同等の価値もないわ!」
終わらない言い争い。今度は無関心だった藍原君も風見さんを弄る。ただの八つ当たりだろうな〜。
いまは“作戦会議”の時間なのにこれじゃあいつまでたっても終わらない。
自然と溜め息をついたとき――――――野々宮さんがふと呟いた。