牙龍−元姫−








「はあ?真似してんじゃないわよ」

「お前がな」

「アンタ達“心”って言ってたじゃない。今さら替えないで。変更不可能よ」

「僕は響子が居ないから嫌だよ」

「はあ?餓鬼みたいなこと言ってんじゃないわよ」

「それを言うなら風見ちゃんもじゃね〜の」

「私はいいのよ。なぜなら私だから」






またもや始まった終わりなき争い。



きっと彼らと対等に渡り合えるのは風見さんぐらいだろう。



改めて愛の力は凄いと実感した。そしてなんとも傍迷惑な愛だとも思った。



ぼーっと事の成り行きを見つめる。意味のないチョークを持つ手が寂しい。















ぼんやりしていると七瀬君から声をかけられた。



突然の事で声が上擦る。



は、恥ずかしいわ。





「僕は響子が居るならとこ別にどこでもいいよ」





チョークをもったまま立ち竦む私にいう爽やかな笑顔で七瀬君。





えー…



これまた無理難題だなオイ。





私は迷って野々宮さんに目をやる。


野々宮さんの意見を取り入れようと思ったんだ。でも―――‥










「きょおこ〜、イチゴ味?」

「うん。イチゴがいい」





藍原君が退屈になったのか野々宮さんに絡み始めていた。



野々宮さんは“助けてオーラ”に気付かない。



藍原君は掌に可愛く包まれたイチゴのキャンディを野々宮さんの掌にコロンと置いた。
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