牙龍−元姫−





眼鏡は悄気たかと思うと目にメラメラと炎を燃やし始める。



変わり身はえーなオイ。





「あの女だ…!あの女がいつも俺達と響子ちゃんを阻む壁なんだ!」





憎しみからか読んでいた小説に力が入り本がグシャグシャと歪む。




――――特に俺は優れて勘が鋭いわけでもない。稀に当たるぐらいだ。それもたまたま。



でも“あの女”というのは、十中八九わかる。





「…風見さん?」

「ああ!」





―――やっぱり。



闘志を燃やす眼鏡を横目に、1人納得した。



何の理由もなく野々宮さんの横に立てる人物は決まっている。3Aの風見さんもそのうちの1人。





「俺は風見さん好きだけどなー」





気が強いところがいい。1つ言っておくけど俺はMじゃない。確かかにギャルだけどああ言う美人系のギャルは許せる。



話したこともない風見さんを思い浮かべると彼女の魅了に頷いた。








…しかし、そんな俺に賛同しない奴がいた。





「馬鹿か!お前はあの女の恐ろしさを知らないから…!」





賛同しないのはこの眼鏡。



そんな眼鏡に始めは不満を露にした。



でも語るうちに徐々に顔面蒼白になっていくコイツが、流石の俺も心配になる。



眼鏡は震える唇を開け、声を振り絞りると小声で話す。





「響子ちゃんに近づく度にあの女は目を光らすんだ。そしてその度にあの人等に合図するんだよ…」

「あの人等?」

「彼等だよ」





眼鏡はコソッと俺に耳打ちし、告げる。



眼鏡は耳打しながらも目は金色の彼と桃色の彼を捕らえていた。



“彼等”って彼等のことか。



俺は納得して頷いた。



でも―――‥



ちょっと待てよ?







瞬時に1つの疑問が浮上する。
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