牙龍−元姫−
「でも風見さん達って仲悪くて有名じゃ、」
風見さんが牙龍を毛嫌いしていることは神楽坂の生徒なら誰でも知っている。
顎に手を添えて首を捻る。
どういうことだ?
目だけで語りかけると、眼鏡は丸メガネをくいっと持ち上げて俺の疑問に答える。
軽く冷や汗を伝わせながら。
「変なとこで共同作業するんだよ」
憶測にしか過ぎないけど変な場面というのは野々宮さん関連のはず。
眼鏡は懐かしむように、思い出に耽る。
「彼等が野々宮さんから離れたとき俺達は歓喜のあまり泣きながらパーティーを開いたさ」
あ。その話知ってるかも。
突然眼鏡から語り出される思い出にそう思った。
あの日――――‥
野々宮さんが牙龍を抜けたあの日。
廊下を泣き叫びながら走っていた集団が居たと小耳に挟んだ。
でもそんな事よりも牙龍の話題で持ちきりだったから誰も特に気には止めなかったっけ?
俺も傍迷惑な集団だなー、としか思わなかったけど…
お前らFCだったのかよ!
「しかし何だいまの彼等の態度は!?我等が響子ちゃんにいまさら馴れ馴れしすぎるではないか!」
「ちょ、眼鏡!声でけえよバカ!」
慌てて俺は眼鏡の口を押さえるとチラリと周りを見渡す。的確に言えば金色と桃色辺りを――――――――――そして安堵。
誰も気づいていないみたいだ。