牙龍−元姫−
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「――――――ご、ご迷惑をおかけしました」
私は羞恥と後悔で胸が一杯だった。穴が在れば今すぐにでも入りたい程に。自然と顔が火照る。
目はウサギのように真っ赤で顔は涙でぐちゃぐちゃ。最悪。涙腺が弱かったとは言え、人前であれほど泣くものではない。しかも外。
「ワハハハ!良いものが見れたよ」
良いもの?
もしかして私の子供みたいに泣いている姿?
―――…私は恥ずかしさで先ほどとは違う意味で泣きたくなった。
しかし、私は知らなかった。
帰り際にサンタのお爺さんが千秋に耳打ちしたとき、
『お前さんが誰かに優しくするのを見たのが今日一番の驚きじゃ』
そう、こっそり告げた事を。
私の泣き面でもなく、泣き声でも無く、珍しすぎる千秋の優しさにサンタのお爺さんは驚いていたのを私は知らなかった。