牙龍−元姫−
2人は綺麗なまま【ロマンス】となった。
×年後が舞台の共学となった花園【茨棘の罠】へと受け継がれて。
実は【深紅の薔薇】では書かれてはいないが後に自殺していた2人。
ミナがお姉様に居ない孤独と喪失感に堪えきれずに自殺。後に自分の過失だと責めてミナの後を追ったお姉様。
そして輪廻を巡り生まれ変わった2人。しかし運命か否や、ミナは前世の記憶を受け継いでいたのだ。
前世の悔いを改めミナは2度目の人生を歩む、荒れ果てた花園で。
「恋は、難しいよね」
ミナの純粋な愛が【茨棘の罠】では束縛愛へと変わる。それは1度は奪われた後悔から。
白鷺先生は【深紅の薔薇】では決してミナの汚れきった欲を見せなかった。純情のミナを演じさせた。
だけど“譲れない愛”を書ききった、波乱の続編で。
「なぁーに言ってんの!あんたに恋なんて百億年早いっつーの!」
「わ、わたしだって恋くらいしてるし!大好物のメロンパン以上に好きなひといるし!」
「え。なにそれ初耳。だれだれ?」
興味津々に食い込んでくるりっちゃんは既に小説をそっちのけ。
雑に机に放り投げた。
だからそれ、私の小説!
もう少し丁寧に扱って!
文句を垂れながらも私は想い人を思い浮かべ、ポッと頬を赤らめる。
「の、野々宮響子さん」
「だと思った」
「…えええ!?」
「なに驚いてんの。こっちが驚きたいし。つか恋じゃなくて憧れでしょ?亜美菜が野々宮さんの追っかけとか今さらだから!」
「うっ!ひ、否定できん…」
亜美菜(アミナ)と呼ばれる私。
神楽坂高校3Eの女子生徒です。
私は野々宮さんを追っかけて、この神楽坂に入学した。因みに幼なじみのりっちゃんは牙龍の追っかけだったりする。
幼なじみ共々救いようのない熱狂ファン。
「でもさ?これ【甘快シリーズ】なんだよね。【禁愛シリーズ】じゃないの?」
小説の表紙をヒラヒラ開け閉めしながら確かめ、私に問い質す。
「うん【禁愛】じゃなくて【甘快】だよ?」
白鷺先生【甘快シリーズ】には、この【深紅の薔薇】や【茨棘の罠】以外にも沢山ある。そして【禁愛シリーズ】の他にも多数シリーズ作が存在する。