牙龍−元姫−
「私もりっちゃんは小説読まないんですよ!読んだら嵌まるのに!」
「りっちゃんって確か幼なじみの子だっけ?」
「あ、はい。そうです!」
「そっか〜。私も今度会ってみたいな」
だって亜美菜ちゃん“りっちゃん”の話をしているときは良い顔してるから。
と、
微笑む野々宮響子さんにやっぱり凄い人だなぁ…と思った。
人の一喜一憂を見逃さない洞察力と観察力。人を包み込む包容力。同じ年なのに私よりも数段大人びている彼女。
いつも、りっちゃんが追い掛ける彼らを批判する私だけど、彼らが彼女に惹かれる理由だけは理解できる。
わたしは、ただの一ファン。
隣に居ることすらおこがましい。
でもその綺麗な瞳に自分だけを映してほしいって……私の目に閉じ込めてしまいたい……と思わされる。
こんなに彼女を求めてしまう私は端から見れば可笑しいのかな?
ずっと深紅の薔薇のミナのような純真な心でいたい。2部のミナみたいに堕ちることはない…
でもきっと私が堕ちる事はない。彼女を困らせることはしたくないから。それに私にはりっちゃんという頼もしい幼なじみがいるから大丈夫。
そう考え込む私に、
彼女は困った風に笑いながら言う。
「私ね、最近は図書室に行けてないんだ。もしかして待ってたりした?」
「い、いえ!じ、実は私も補充で行けてないんです!」
――――嘘。
本当は待ってた、ずっと。
彼女が学校を休んでいたことを知りながらも待ってしまう自分がいた。
来ないと分かっているのに。
時間が過ぎるのは早く、図書室の閉鎖時間までずっと居座っていた。