牙龍−元姫−
お姉ちゃんは頭をブンブン振り、気分を切り替える。
そして彼女に目をやると、瞬時に笑顔に切り替えた。
「あ!響子ちゃ〜んこれサービス!」
「いいんですか?」
響子さんの前に置かれたトロピカルジュース。
この店ではかなり値の張る代物。
正直言うとこの店はぼったくりだ。水でも金をとる悪質メイド喫茶。
「いいのよ〜!始めてご来店するお客様だから〜!」
「有難うございます」
「やーん!可愛い!食べちゃいたーい!」
それはわかる。流石、私の姉。
「マナちゃん!アタシにはないの?」
「私もトロピカルジュース飲みたい」
「俺もだ」
「てめえ等はさっさと帰りな」
橘さんが響子さんのトロピカルジュースを羨ましそうに見ながら言う。それに早苗さんとスリムさんも同意する。
図々しい3人にお姉ちゃんは青筋を立てた。
「なんで!?アタシ等もお客様なんだけど!それもかなりの古株!」
「そうそう。お客様は神様なのにその態度は頂けないな、マナちゃん」
「それに週4で来ているかなり常連だ」
「来すぎなんだよてめえ等は!」
このトリオはよくこのメイド喫茶でオフ会を行う常連客。かれこれ数年目に突入する付き合いらしい。
トリオは互いを白鷺・猫田・スリムと呼んでいる。
干渉はしない、あっさりとした付き合いだったらしいけど、最近になって漸くお互いのことを知り始めたらしい。