牙龍−元姫−





「だいたい“スリム”とか笑っちゃうんだけど〜。スリムには程遠いデブだし。頭大丈夫ぅ〜?」









「ふん。貴様に俺の偉大さを理解することは不可能だ」

「まぁマナちゃんだし」

「マナちゃん頭良くないもんね!」




きっと後の2人に悪気はない。



お姉ちゃんは怒りに震えている。必死に耐えていることが奇跡だ。昔のお姉ちゃんからは考えられない。



この存在自体が濃いトリオはネットで知り合ったらしい。スリムはユーザーネーム。





「確かにデブよね」

「ちょ、里桜っ」





そんなやり取りを、前に座る響子さんと風見さんがしている。





「俺はもっとツインテールのロリータ系が好みだ。泣き顔がそそる。いや、お兄ちゃんと呼ばれるのも捨てがたい」

「私は断然【ドキッ!これが女だらけのschool・life☆】略して【ドキこれ】のインテリ美香ちゃんだ。あの知的さがたまらん」

「なにおー!?【ドキこれ】ならキャラ投票堂々の第1位の王道桃子ちゃんに決まってるだろうが!あのエンジェルスマイルが世界を救う!」





「さっさと帰れオタク共」





スリムさんは頻繁にアイドルのサイン会や握手会に出没。



そこに2人が同伴しては、現在のアイドルについて評論する失礼極まりない人達。



橘さんは新作のゲームは常にゲットしているかなりのゲーマー。トリオで【ドキこれ】はブームみたい。



早苗さんは一番漫画冊数を持っている漫画マニア。敵情視察みたいなものと言っていた。表には見せないが橘さん並みの妄想力だと私は思っている。





「因みに俺の宝は等身大のミルちゃん抱き枕だ!」

「「おー!!」」

「う、羨ましいぞスリム」

「ええ!あれ手に入れたんだ!?限定プレミアムなのに!流石スリムさん!情報が早い!」

「ふっ。俺を称えろ!」

「「よ!スリム様!」」





…空気に温度差を感じる。



熱気のある橘さん側とは裏腹、風見さんとお姉ちゃんは白けた目をしている。





「「……」」

「なんで相席にしたんだろ…」

「里桜、馬鹿でしょ」

「今は言い返せないわ…」





風見さんは偶々、この店で昔馴染みの早苗さんを見つけた。



偶然の再開に戸惑いながらもそのまま話が弾み3人の席へと流れるように相席してしまったらしい。



温度差が感じるなか、更に温度差は広がりをみせる。
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