牙龍−元姫−




『――――そしたら良いタイミングで“彼奴”が僕の前に現れたんだよォー!なんか白夜のお眼鏡に適ってるらしいしさァ。


いまだけ、だけど』

「だからと言って何故荷担する」

『だから言ってるでしょー?ただの気まぐれー!』

「気まぐれで白夜に叱られた挙げ句、ボコられてたら世話がないな」

『うるさい!流のヤツ、僕の歯ァ折りやがった!』

「それは差し歯だろ。正しく言えば折ったのは寿々だ」

『そうだよ!あの女だよ!僕の歯を折ったくせに僕を覚えてないなんて…!』

「まぁ落ち着け」

『〜ッもう!夏彦はあの女と知り合いなんだから、何とかしてよ!』

「無理だ」





電話越しに春陽は声に悔しさを滲ませる。それを冷静に宥めるが、夏彦は首を突っ込むつもりなんて更々ないのか拒否した。



あの女――――橘寿々を怨む春陽。


そして“彼奴”とやらに野々宮響子を…頼まれた。
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