牙龍−元姫−



「春陽は根本的に間違ってるんだ。響子ちゃんみたいな子を動かすなら心理を理解しろ。まず響子ちゃんに手を出そうとすることさえ間違いだがな」

『…だってェ〜』

「お前はバカでも僕の片割れだ。悪い事は言わない、止めておけ。――――――それが好奇心からなら尚更だ」





片割れからの厳しい言葉に春陽は口を紡ぐ。





「お前が彼奴に荷担するならすればいい。しかしそこに響子ちゃんを絡めるな。どうなるかくらい、分かるだろ。身を持って理解したいなら別だが?」

『…もう身を持って体感したよ』





十二分に灸を据えられた。そして殴られたあとも残っている。これでまだ彼女を取り巻く者の厄介さを理解出来ていなければ、ただのバカだ…と春陽は溜息をつく。



しかし頭を使うのが苦手みたいな春陽。心理とか理解とか言われてもよく分からないため口を閉ざす。


行き当たりばったりな彼に、念のため釘を指しておく片割れ。





「何でもいいけど、今は身勝手に動くなよな」

『なんでェ?』





動くつもりだったのか…と言いたくなる。懲りない春陽に夏彦は溜め息をついた。



物分かりの悪い片割れと、伸びてきったラーメンの麺にイライラが募る。
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