牙龍−元姫−



私は問題事を起こさないように丁重に誘いをお断りした――――――――だけど、彼らは全く耳を貸さない。




「ほら行こ!」




無理矢理わたしの腕をグイッと引っ張る。いきなりの事には小さな悲鳴を上げた。私は戸惑いながらも抵抗を図る。何もドーナツ店でやることっ?外でナンパしてきたらいいのに。まず何で私なの?




「や、やめて下さい」

「いいじゃねえか、絶対楽しいって!」

「そうそう!君すげえ可愛いし優しくするからさ!」







―――……気持ち悪い。



そう思った私は今すぐ腕を離して欲しい一心だった。頭痛と吐き気が襲う。ぐらぐらと頭が揺さぶられる感覚。


誰か、と思ったけど周囲は見て見ぬふり。薄情だけどそれが正解の反応。巻き込まれたくないのは誰だって同じ。私が周囲の立場でもそうしていたかもしれない。
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