牙龍−元姫−
隣で庵の息を呑んだ気がする。下にいる皆も。泣き始める人がちらほら。
俯く彼らに、泣き顔は見られたくないと察して前へと向き直る。
「行こ?」
「、うん」
少し躊躇する庵。私の久しぶりの笑みを見て口に手を添えていたのは知らなかった。
再度階段を歩き出す庵と私。
階段を全て登りきったとき―――――庵が後ろを目だけで振り向けばフッと笑った。
「庵?」
私は首を傾げる。
優しい笑みを浮かべながら後ろを指差された。その指を追いながら振り返れば――――‥
「…みんな、」
――深々と頭を下げる彼等がそこにいた。敬意・謝罪・忠誠・端は別のなにか。
その行動には何の気持ちが込められているのかは、よくわからない。
だけど
「…ありがとう」
私への想いが感じ取れた。
肩を震わせる人がちらほらいて、私まで目尻が熱くなってしまった。そんな私の肩を優しく抱く庵。
――――やっぱりこの場所は情に溢れている。
再び庵に肩を抱かれ歩き出しながら懐かしいこの場所に恋い焦がれる。
久しぶりのこの場所が恋しくなり歩きながら一歩一歩を噛み締めた。