牙龍−元姫−
私は千秋が早く来てくれるのを祈った―――――――――しかし。千秋が来る前に事態は一変する。ある一人の少女の登場によって。
「おいいいいいい!お前等!桃子ちゃんの腕を離せええええい!」
「――――ぐはっ!」
学校で偶然出逢った、あの女の子。自販機の前でイチゴミルクを呉れた女の子―――――橘寿々さんが突然現れた。
走ってきた勢いでそのまま私の腕を掴んでいた男を蹴り飛ばした。男は突然の衝撃に対処出来ずにあり得ない距離まで吹っ飛んだ。
私は突然の出来事で吃驚。固まって動けない状態。どうして橘さんが居るの?そればかりが頭を埋め尽くす。何でココに…
「桃子ちゃーん!」
「え…………た、橘さん?」
「やだなあ!そんな他人行儀な呼び方!もっと気楽に!寿々って呼んでくだせぇお嬢!」
えっと、
他人行儀も何も他人だよ?私達は。
反応に困りながらも、そう思う。私は橘さんのキャラに戸惑った。学校でイチゴミルクを貰ったときは‘健気な女の子’そう言う印象を受けたんだけど。いまは――――――…
変な女の子?
だってお嬢って明かに"そっち系"の呼び方っぽいよね?危ない感じの。それにいきなり飛び蹴りを喰らわすし。橘さんって変わった子だな、ってつくづく思う。
「のわああああああ。どッ、どおしたのー!?その目!滅茶苦茶真っ赤じゃないですか!?―――――――ま、まま、まさかコイツ等のせいで!?」
私の肩をぎゅっと握ると素晴らしい勘違いをする橘さん。
ま、待って!ちょっと待ってよ!か、肩が痛い。滅茶苦茶イタイ!橘さん、ち、力込めすぎだよっ、
自分の世界に入っている橘さんには聞こえないと思ったから弁解はしなかったけど、あり得ないくらい肩に力が込められて痛かった。