牙龍−元姫−



あのネジ以来、漆黒の少年には会っていない。



もう一度会ってみたいかも、と僕らしからぬ事を考える。



『何で眼が青いんだよ!』

『きもっ!宇宙人だ!』

『髪色も変だし!』



いつものように5人の馬鹿な餓鬼に囲まれる。たいして何とも思わなかった。今も昔も。



慣れ?…違う。
下らないと思ってるからだ。



つまらない。何もかもが。刺激のない繰り返しの日常。この退屈な日常に僕は飽きていた。



だから罵倒されても何も感じなかった。



いままでは。



だけど今日は違った、



『庵はアイジンの子なんだってよ!』

『…!』



やっと反応した僕に餓鬼大将は厭らしく笑う。その醜い笑顔に僕は苛ついた。



『アイジン?何だよそれ?』

『愛されていない子供だって母ちゃん言ってた!』

『庵は愛されてないんだ!』

『アイジンの子だからな!』



愛人の意味さえ分からない餓鬼に言われたくなかった。



何より母さんや父さんが馬鹿にされていることに腹が立った。



小学生のくせに幼稚なコイツらを殴ってやろうかな?うん。いいよね。むしろ感謝してくれてもいいと思う。殴って正常に戻してあげるんだから。さぁボコろうか。



なんて思ったとき。



『……ッいってええ!』



1人の頭に何かが当たった。



なにこれ?



『…飛行機?』



ラジコンだった。



( ぶうんぶうん。)



機械音を鳴らして宙を舞う。
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