牙龍−元姫−



「空が投げるから悪いんだよ?飲めばよかったのに」

「はあ!?なら庵が飲めばよかったじゃん!」

「何で僕が飲む必要があるの?空のためにチューブ1本使ったのに」

「入らねえよ!」





庵と空の言い合いが始まった…と言うよりも空が突っかかり、庵がサラッと流す感じ。



床では寿々ちゃんが叫びながら転がっていたけど何処かに走って行ったから居なくなった。



わたし、どうしよう…



そう迷いながら口に手を宛がう私に戒吏が声を掛けてきた。





「響子」

「…戒吏?」

「やる」

「なぁに?これ」





シンプルな小さな箱やポップな袋に入った大きな箱がテーブルに置かれる。それが幾つも。



それを、ジッと見つめる。





「ケーキ」

「…これ全部?」





ケーキ買いに行ったのは知ってたけど、この量は流石に多いと目を見開く。





「食うだろ?」

「…え、」





私は戸惑い、目を泳がす。だって今から?もう夜だよ?確かにケーキが私を呼ぶ声が聞こえる。でも―――‥





「ふ、太るからいいよ」





確実に太ってしまう。



だから要らない、と首を横に振る。




「あ?食わねえのかよ」





ドカッとソファーに勢いよく座りながら遼が私に言う。



食べたいよ、食べたいけど女の子は複雑なの。





「…うん。肌にも悪そうだから」

「んなの一々気にしてんじゃねえよ。いままで此方は何個食ったと思ってんだよ」





不機嫌そうに遼が述べる。しかしケーキを思い出したのか若干顔を青くさせ、ケーキから目を背けた。



わたしはケーキを見ながら言葉を濁し、どうしようかと躊躇う。
< 604 / 776 >

この作品をシェア

pagetop