牙龍−元姫−




「―――…響子ちゃんの手、眠くなる…」





どうやら眠たいらしい。虚ろな目をしている。いま直ぐにでも寝てしまいそう。



凭れる寿々ちゃんをどうしようと部屋を見渡せば…



え?








「ど、どうかした?」





皆が私達を見ていた。





「いや、何でもない」





戒吏は直ぐさま目を反らす。あまりに凝視されていたから私は驚いた。





「あれだよね?母親が子供の髪を乾かしているみたいな」

「あ、成る程」





そう言う庵に空が頷く。もう突っ掛かってはいないようだ。私と眠そうな寿々ちゃんを見ながら会話する。



確かに寿々ちゃんは眠そうな子供みたいで可愛い。自分に子供が居たらこんな感じなのかな?と微笑ましくなる。





「子供か〜。俺と響子の子供ならスゲー美形じゃね〜の。響子は何人欲しい?無難に2人がセオリ〜?」

「え?こ、子供?」





蒼衣が人差し指と中指で二を表す。確かに将来子供は欲しいけど。蒼衣が言う子供って私と蒼衣の?―――――――え?





「ふざけんじゃねえよ!何でお前と響子の子供なんだよ!変な事言ってんな!」

「変な事ねぇ?オメエ響子の指見てたじゃね〜の。なあ、遼?」

「ああ。ずっと指見てたぜ?自分もその指で乾かして貰いてえとか変態染みた事考えたんだろ?」

「っな!チゲえよ!」

「考えたの?空」

「い、庵!だ、だから違ッ」

「なら僕と同じだね?」

「「「「は?」」」」





庵の言葉に空と、空をからかっていた遼と蒼、3人を無視していた戒吏の声がハモった。



庵はしれっと言う。





「普通誰でも思うよね?皆も思ってたから見てたんでしょ?違うの?」

「…」





開き直る庵に誰も何も言えなかった。
私は話の全貌がよく分からない。



庵は黙り込む4人から離れて私に近寄ると寿々ちゃんを起こす。





「起きないの?寿々」

「んー…」

「ケーキあるよ?」





その言葉にガバッと起き上がった寿々ちゃん。数秒前までは眠そうだったと思えない素早さ。





「ケーキ!?食べる!」





そしてテーブルに走っていった寿々ちゃん。庵は私の前にしゃがみ手を差し出し立たせてくれた。
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