牙龍−元姫−





「うん。“プチブル”行きたい」





蒼衣の“2人で”と強調された言葉に気づかず頷く。



最近大手のデパート内に出店された洋菓子屋さんの“プチブル”



里桜には行こうと誘ったものの、まだ一度も行ったことがないので興味津々。





「はあ?なんでお前と二人で行くんだよ!響子!俺と行こうぜ?」

「誰とでもいいよ。“プチブル”に行けるなら」

「つ、冷てえよ…」





本当に“プチブル”に行けるなら誰でも良かった。ずっと行きたかったけど流石に1人で行く勇気はない。



悪気はなかったけど、ショックを受けた空には気がつかなかった。上から石が落ちてきたかのようにショックを受けている。





「空?どうしたの?」

「…あ、愛と鞭みてえ…」





私は涙目の空の頭を撫でる。



ボソッと呟かれた言葉は聞こえなかった。









「ッああ!」





―――突如。



新聞紙を放り投げ声を荒げた寿々ちゃん。



直ぐさま扉に駆け寄ると扉付近にポツンと落ちてあった雑誌を手にとった。
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