牙龍−元姫−
「寿々それを取りに行ってたの?」
庵が雑誌を見ながら聞く。きっとジュースを顔に被ったときに落としたんだと思う。
庵は寿々ちゃんが下に降りていた原因ともなる雑誌を指差した。
あれ?じゃあそれが――‥
「響子ちゃん!これこれ!この雑誌だよ!」
テーブルにバンッと叩きつけ雑にページを捲ると、あるページで止めた。
私はそのページを食いつくように見る。
そこには…
「あ!早苗の名前だっ!」
「ホラね!嘘じゃなかったでしょ!?」
「わあ。すごーい」
私と寿々ちゃんはキャッキャッとそのページを見て騒ぐ。周りは気にせず私達だけの世界。
「何だこれ?」
左隣から遼が雑誌を覗きこむ。
頬にサラッと金髪が触れ、微かに肩を揺らしたけど誰にも気づかれなかった。
よく見れば戒吏も右隣から覗いている。美形の2人に近くで挟まれている私の心臓(ハート)は爆発寸前。だけど皆雑誌に夢中だから誰も気づかない。
そんな私を無視するかのように話は進んでいた。
「へえ〜この"猫田のの"は寿々と響子の友達なんだ?僕は知らないけど」
「俺ァ猫田なら知ってるぜ?中々イカしたホラーセンスしてやがる」
庵は知らないみたいだけど、遼は知っていたらしく雑誌を見ながら言う。
でも私は遼の言葉が引っ掛かった。
「…ホラー?」
「あれ?言わなかった?猫田が書いてるのはホラー漫画だよ?」
「(…嘘)」
私は口を開けたまま固まった。