牙龍−元姫−



寿々ちゃんは目を光らせると力説し始めた。





「コンプレックスはチャームポイントにしなきゃ!巨乳をいかさないといけないんだよ!桃子ちゃんは貧乳だけどそれでも頑張ってる!だから強調しなきゃ!この胸も!」

「ッひぁ」





いきなり





寿々ちゃんが私の胸を―――――――――揉んだ。





「…あ、柔らかい」





寿々ちゃんは呟くとワイシャツの上から揉む。それも鷲掴みで。



暑いためベストもセーターもなくワイシャツだけで、ワイシャツの下は下着だけ。キャミソールでも着とけば良かったと後悔。



寿々ちゃんの名前を呼ぶが止めてくれない。顔が強ばるのを感じた―――――――そんなとき。











どこからともなく出てきたピコピコハンマーで





バキィ!





「痛っ!」





遼が殴り付けた。





「なにやってんだテメエは!?テメエがMr.HENTAIだろうが!ぶっ殺すぞ!」

「痛い痛いマジで痛い!ピコピコハンマー壊れてる!どんだけ強く殴り付けたの!?滅茶苦茶痛いんですけどっ!?」





頭を抱えながら痛みに悶える寿々ちゃんを誰も助けはしない。



いまばかりは私も、何とも言えなかった。





「…ううっ」





恥ずかしくなる。考えれば考えるほど羞恥心が増す。涙腺が緩んで涙ぐむ。



イヤ。もうヤダ。



ママの胸は普通だったのに。でもママは背が高くスラッとしている。きっと私の場合は背にいくはずの成長が全部胸に行ったんだ。



いっそペチャンコに潰れちゃえ。なんで男の人はないのに女の人にはあるの?不公平だよ。



腕を胸の前で交差させる。あの、中学生の頃のように。








「人それぞれだよ」

「…庵」





私の頭を優しく撫でてくれる庵に少しホッとした。安心できるよう笑顔をくれた。
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