牙龍−元姫−
「でも響子ちゃんの悩みは羨ましい!逆に自慢できる悩みだよ!?」
「…自慢?」
「そうだって!アタシは貧乳だから!寄せて上げてBカップだから響子ちゃんの胸わけて欲しいよ!」
「それ以上喋んなブス・貧乳・デブ」
「おおおお、おい!トリプルで来るの止めたまえ遼さん!亀有公園前派出所に勤めている君が女の子を傷つけてもいいのかい!?」
「誰が両津〇吉だ!そこの湾に沈めんぞ!」
「あ、洒落通じた。遼さんも眉毛、カモメにしなよ!」
「いますぐテメェを存在罪の容疑で逮捕してぇわ。ブス貧乳デブなんて良いとこ何もねえじゃねえか。いっそ貝になれ」
「くうううう、悔しい!カモメに言われたくねえ!しかも全部当たってるから何も言えないのが尚更腹立つ!Bカップ舐めんなバーカバーカ!豊胸手術に憧れてる世の貧乳女子を敵に回したぞお前!」
「オメエ、BどころかAあるかもわかんねえのに詐欺んじゃね〜よ」
遼に寿々ちゃんが突っかかり始めた。蒼も加わり寿々ちゃんを弄る。
私は考える、寿々ちゃんの言葉を。
自慢なんて考えた事がなかった。きっと胸への意識は中学生のまま止まっている。ずっと、嫌だったから。
だから長所としてみようとは思った事はなかった。長所か…
ジーッと自分の胸を見つめるけど、
「絶対無理」
小さく呟いた。
無理…。無理だよ。絶対に。長所としてみるなんて。まず私の身長と比例していない胸がどうも気に入らない。
いつも悩まされてきた。イヤな想いもしてきた。
Sサイズの服を買うも胸辺りがキツくMサイズは寸法大きい。敢えてダボッとした服を着てみるけど更に胸の大きさがが強調される。ゆえに好きな服を中々着れなかった。
電車で息の荒いサラリーマン風の中年男性から痴漢にもあったときは、誰にも言えなかった。因みにそれ以来電車には乗っていない。
――――そんな事をボーッと考えていると、ずっと黙っていた戒吏が私に言う。
「もうソイツとは会ってねえよな?」
「うん。と言うよりも彼方は会いたくないんじゃかな?」
多分…と言うよりは絶対会いたがらない。
“あの光景”を思い出しながら言う。