牙龍−元姫−
「へえ。頼(ヨリ)もあの店好きなの?私もよく行くのよ」
「里桜も?夏季限定のパンケーキ食べた?」
「まだよ。今度時間があれば行きたいわ」
「なら一緒どう?私年がら年中暇だし」
「本当?ならその前に頼が言ってたショップ見に行かない?」
「おっけー」
あたかも元からの友達のように話す二人。
りっちゃんの名前は頼(ヨリ)
りっちゃんも風見さんにため口で里桜と呼んでいる。
この数分間で仲が深まった二人を見てから、響子さんを見てみる。
「…」
…無言で何だかムッとしていた。
「りお…」
「何よ」
ギュッと後ろから抱きつく響子さんに冷たく聞くが、邪険にはしない。
風見さんって地味に優しいな。
きっと私がりっちゃんにやれば邪険にされるのに。
「…」
「どうしたのよ?」
黙りする響子さんは膨れっ面をし、りっちゃんの方を向くと
「里桜は、私の」
――――――可愛い。
そう思った私はきっと場違いに違いない。だけどりっちゃんに嫉妬してる響子さんが可愛かった。
同時に膨れっ面の意味が分かった。
「馬鹿ね、私は響子が一番よ?」
「…ん」
コクンと小さく頷く響子さん。
きっと風見さんがりっちゃんに取られると思ったんだろう。その光景が微笑ましいかった。そして、
「…りっちゃん」
「なに?シラケた面して」
「…いや。何だかんだりっちゃんが一番だなーって」
「はあ?野々宮さんの真似?可愛くないし」
「…やっぱり、りっちゃんだ」
「だから何が!?」
やっぱり……どんなに“響子さん響子さん”と言っても最終的にはりっちゃん。
貶されても私の一番はりっちゃんだと思った。
一瞬…
本当に一瞬だけだけど。
風見さんにりっちゃんを取られるという考えが過り焦ってしまった。きっと響子さんと私は同じ気持ちだった。
「(―――――あ、)」
響子さんと目が合い思わず笑いあう。
「里桜、私の事好き?」
「ええ、勿論」
「私は素っぴんの里桜が好き」
「黙りなさい」
そのやり取り思わず笑ってしまった。相変わらず響子さんは風見さんに引っ付いている。
「里桜、今日メイク濃いよ?」
「―――…」
「(え…風見さん?)」
後ろから引っ付いている響子さんにはきっと分からなかったと思うけど、
確かに揺らめいた、風見さんの目が。