牙龍−元姫−





私は響子さんと同じ事を思った。いつもより濃いメイク。……そのメイクはいつもお姉ちゃんが隈を隠すためにするメイクだ。



風見さんは寝不足なの?ただの夜更かしかな?どうして隈が出来たの?――――――なんて私に分かる筈がない。





「別に偶々よ」

「…そっかぁ」





これまた、風見さんは気がついていない。後ろから響子さんが風見さんを探る目で見ているのに。



何だかこの二人、似てるな。



お互いがお互いの事を考えている。






そう思いながら異様な雰囲気を流す二人を眺めていると、



校内アナウンスが流れ始めた。








【皆さんおはようございます。今日の天候は快晴。澄みわたる青空はまさに神無際日和です。なんと皮肉な!いっそのこと台風が直撃してテント諸とも学校ごとぶっ飛ばして欲しいと何度思ったことでしょうか(「ぶ、部長!」)―――――おっと。本音が漏れてしまいましたね。部員が煩いので注意事項だけでも言っておきましょうか。くれぐれも怪我にはご注意下さい。以上。(「早ッ!?」)ではA組の生徒から―――――】





突如流れた校内アナウンス。スラスラと用意された原稿を単調な声で読み上げる個性的な放送委員。(原稿無視してるみたいだけど。ヤジ飛んでるよ…。)





「里桜、A組だって」

「ええ」





流れたアナウンスを聞くとA組の二人が鞄を持ち私達に向き直った。




「ならもう行くわ」

「ばいばい」





片手を上げた風見さんと、胸元辺りで小さく両手を振る響子さん。



りっちゃんもそれに答える。



校内放送をボーッと聞いていた私は慌てて手を振り二人を見送った。
< 636 / 776 >

この作品をシェア

pagetop