牙龍−元姫−
その心、依存か愛か
***
いまは開会式が終わり10分後。蒸し蒸しと暑さが校庭を覆い被さる。
――――――10分前。開会式で絶対ルール言う名の5ヶ条を何度も校長先生から伝えられた。
事件を出したくないのなら遣らなければいいと心底思った。しかしコレはだらけきった生徒を引き締めるための渇でも有るとか無いとか。
体調不良・身内の危篤など何らかの事情がない限り、不参加は認められないのは原則だ。
因みにこの暑さに耐えきれず今にでも倒れそうなのに不参加が認められないなんて、薄情な学校だと思う。
教師達は出場しないから、笑って居られるんだ。笑う教師を見て殺意が芽生えた生徒は数知れず。
「うー、」
あまりの暑さに唸る。本当に暑い。言葉では伝えきれないくらいに。
張られたテントの下でパイプ椅子に座りながら唸る。
すると、ある人物が私の隣に座った。
「響子」
「…ん?」
「飲め」
先ほど私を置いて何処かへ去っていった戒吏が戻ってきた。手には何故かミネラルウォーターが。
「これ……私に?」
「ああ」
戒吏にお礼を言えばぶっきら棒ながらも言葉を返してくれた。態々買いに行ってくれた事実に嬉しくなった。
私に差し出してきたミネラルウォーターを持つとヒンヤリとしていて暑さが和らいだ。
「アイツらは?」
「庵は…用事かな?蒼は遼と何処かへ行ったよ」
「―…そうか」
アイツらと言うのは先程まで居た庵と蒼の事だろう。
戒吏もそうだけど2人とも開会式の時から私から離れようとしなかった。
“同じクラスだから”と言うたびに里桜と口喧嘩していたけど――――――――――いまは里桜も居ない。
皆一気に何処かへ行っちゃった。里桜に関しては行き先すら知らない。
私の杞憂かも知れないけど最近の皆は何だか変。自惚れではないけど私を1人にする事なんてあまりないのに…
「ねえ、戒吏。エントランスに行かない?」
考えたって分からない事は分からない。なら今は少しでも涼しい所に行きたい―――――そう思った。