牙龍−元姫−
溜め息をつきたい衝動に駆られるが、グッと堪えて戒吏の目を見る。
アナウンスが流れたから早く行かなきゃ。
「私行くよ?」
「ああ」
「じゃあね」
今度ははすんなりと行けそうで安堵する。足早に行こうと歩き出すが――――――再び足を止めて振り返った。
きっと今の私の顔は窶(ヤツ)れている。
一気に10歳くらい老けた気分だ。
振り返れば、恰(アタカ)も
当然のように戒吏が真後ろに居た。
「…何で戒吏まで着いてくるの」
「此方に用があるだけだ」
「……」
絶対嘘だ。
きっと着いてくるつもりだ。現に戒吏は歩き出した私に一定の距離を保ちながら着いてきている。
アナウンスで指定された場所にはきっと女子ばかり。そんな所に戒吏を連れていけば黄色い声が飛び交うに違いない…。
戒吏をどうしよう、と悩んでると…
「――――あ」
ある緑頭が目に入った。