牙龍−元姫−
違う、違うよ…
何で伝わらないの。
どうして思いを言葉にするのはこんなにも難しいの。
「空」
「…」
「…空」
「…、」
微かに反応を示してくれた。私は項垂れる空の髪を触り指を通すと優しく撫でる。
「…空が“男”な事くらい、知ってる」
分かっていないのは私じゃない、空の方なんだよ。
「背もこんなに高い」
撫でる桃色の髪は少し高めの位置。身長が165㌢くらいだとしても152㌢の私とはそれなりの身長差がある。
「手も、指も」
ゴツゴツした“男”特有の手。
その手に指を絡める。
「知ってる、空が“男”な事くらい」
知ってる。知ってた。
いつも可愛い空が、たまに“男”の瞳をするのも―――――全部、知ってる。
「ほら、見て」
何もこの体制だって平然としている訳じゃない。
絡めていた手を取り私の胸へと添える。不意の事で微かに空の手がピクリと動いた。
だけどね、私だって緊張していることは分かってほしい。
「心臓、バクバクなの」
緊張しない筈ない。胸の鼓動が鳴り響く。いまにでも飛び出してしまいそうな程に。きっと手を当てている空には筒抜けだ。