牙龍−元姫−
「垢抜けて見ない間に更に綺麗さに磨きが掛かった」
「…そうかな」
そう言われても嫌な感じはしない。誰でも綺麗になったと言われるのは嬉しい。
しかし褒めてくれたはずの空は、ナゼか顔を顰めた。
「それ以上綺麗にならなくていい」
―――珍しく低い声でそう言った。
空にしては珍しい声に真剣な事なのかと自然と身体が強張る。
しかし次の瞬間には眉を下げて空はポツリポツリと呟き始めた。
「…俺が困る」
「…」
「色んな男に見られるとかスゲー腹立つ。只でさえ目立つのに尚更じゃん。だから響子はそれ以上綺麗にならなくていいんだよ」
「…ふふ」
ポツポツ話す空が可笑しくて思わず笑ってしまった。
その姿はもういつもの空だったから。
「何で笑ってんだよ!真面目に聞けよ!俺は心配してんだからな!」
「大丈夫だよ」
「…はぁ。どっから来るんだよその自信。ふわふわし過ぎて飛んでいきそう」
自信っていうか根拠かな?
わたしの笑顔をふわふわしていると言った空に、再度その笑みを見せる。
「何かあれば空が助けてくれるでしょ?」
「―――響子、」